はじめに
2023年3月31日以後に終了する事業年度より、有価証券報告書において人的資本に関する情報の開示が義務付けられることとなりました。
昨今は財務情報と並び、人的資本についても企業の財産であると捉え、その情報を開示することが投資家にとって有用と考えられてきています。
有価証券報告書を作成しない中小企業においては開示の義務化の適用はありませんが、中小企業においても人的資本を意識した経営が重要であることは変わりません。
本稿では、人的資本経営の重要性や実践方法などについて解説します。
人的資本経営とは
人的資本経営とは、組織内の人員の知識や能力、経験を最大限に活用し、競争力を高める経営手法です。経営者にとって組織の成長と持続可能性に直結する重要な手段のひとつと言えるでしょう。
人材の能力やスキルを最大限に引き出すことで、企業の競争力を高め、革新的なサービスや製品を生み出すことが期待できます。
また、従業員のモチベーション向上や、離職率の低減、生産性の向上につながるのも特徴です。
人的資本経営の重要性・メリット
人的資本経営を行うメリットは主に以下の3つです。
- 投融資を受ける際に有利になる可能性がある
- 企業ブランディングにつながる
- エンゲージメント向上や生産性向上
- 人的資本経営を行うことで、企業の経営陣が人材を重視していることが投資家や金融機関に伝わり、企業信用力が向上します。人材を大切にする企業は長期的な視点での投資や成長が期待できると評価されるためです。
- このため、投資や融資を受ける際に、有利な条件で資金を得られる可能性が高くなります。
- 人的資本経営を実践することで、社員の満足度が向上するだけでなく、企業の評判も良くなります。
- 顧客や取引先に対してポジティブなイメージを与えられれば、ビジネスの拡大や競争力向上にもつながることでしょう。
- 企業ブランディングが向上すれば、優秀な人材も採用しやすくなります。
- 人的資本経営を実践することで、従業員のエンゲージメントが向上し、離職率が低下します。また、働きやすい環境が整うことで、生産性を向上させることも可能です。
- 高いエンゲージメントは新しいアイデアや革新的な取り組みを生み出す土壌となり、組織全体の創造力や柔軟性を高めることにもつながります。
人的資本経営の実践方法
人的資本経営の実践方法として、5つの手順をご紹介します。
- 経営戦略と人材戦略の連動
- 人材評価制度の見直し
- 人材育成・研修制度の充実
- 外部人材の積極的な登用
- 内部人材のスキルシフトやリスキリング
- 経営戦略と人材戦略を連動させれば、組織全体が目標に向かって一丸となり、効果的な人的資本経営が実現できます。
- 一方で、経営戦略と人材戦略が噛み合っていなければ、目標を達成することは容易ではありません。
- まずは、経営戦略と人材戦略を連動させることから始めましょう。
- 従業員の能力や成果に応じた評価制度を導入し、適切な報酬や待遇を提供することで、人材のモチベーションを高めることが可能です。
- 公平で透明性のある評価基準が設定されている企業は、概ね従業員は高い信頼と満足度を保持しています。
- このように、人材評価制度を見直すことで人的資本経営につなげられることを覚えておきましょう。
- 従業員のスキル向上を図るために、研修制度やメンタリングプログラムを充実させることも重要です。
- 充実させることで従業員にキャリアの発展につながるスキルを習得させ、自己成長を促すこともできます。
- 成長できる環境が整うことで社員のモチベーションアップにもつながるので、覚えておいてください。
- 新たな視点やスキルを持つ外部人材を積極的に登用し、組織の多様性を高めることで企業の競争力が向上します。
- 新しいアイデアやイノベーションを生み出す力が強化され、組織全体の活性化につながるでしょう。
- 既存の従業員のスキルシフトやリスキリングを行うことで、組織内の人材が新しい役割や技術に対応できるようになります。
- その結果、企業は変化する市場環境に適応し、持続的な成長が可能です。
- また、従業員の適応力や柔軟性が向上し、企業のリーダーシップ力も強化されます。
まとめ
人的資本経営を実践することで、投融資を受ける際に有利になったり、企業ブランディングにつながったりするといったメリットを享受できます。
これらのメリットにより企業の成長や安定した経営につながるため、企業を経営していくうえで人的資本経営は重要です。
この記事を参考にしながら人的資本経営を実践してみてください。