海外赴任者に対して、基本的には赴任先の現地法人から給与を支給する必要がありますが、社員の希望などにより給与の一部を現地ではなく日本にて、日本の口座に支給することがあります。
◆海外赴任者が日本で給与を受け取るケース
較差補填分を日本法人が負担する場合や、現地通貨ではなく日本円での支給を希望する社員の希望により日本国内で支給するケースなどが該当します。
較差補填などの一部給与を日本法人が負担する場合を除き、給与負担は所属している現地法人がする必要があるため、日本にて支給した給与は、支払いをした日本法人から現地法人に請求する必要がありますが、最終的に現地法人が費用負担をしていれば給与の一部を日本国内で支給することは可能です。
◆較差補填とは
社員に海外赴任をさせることにより追加的に海外赴任者に支給するものを指します。
・現地にて追加で必要となる税金・社会保険料や家賃
・子女教育費等の援助的な意味合いのあるフリンジ・ベネフィット
・海外赴任手当や現地役職手当などのインセンティブ
・日本で受け取っていた手取り額を、現地の物価や為替を考慮して日本での支給額よりも増額して支払う場合の差額分
◆海外赴任手当の例
現地法人で役員などに任命し責任が重くなることなどを考慮する場合や、子女教育費において子供を現地の学校でなく割高でもインターナショナルスクールに通わせる場合など、多くの較差補填により日本において支給していた給与額よりも、海外赴任中の給与額の方が大きくなるケースが非常に多いと言えます。
◆税務申告について
このような日本法人から日本国内で支給される給与については、海外赴任者が日本の非居住者に該当している限りは日本の所得税の課税対象とはならず、支給者は源泉徴収もする必要はありませんが、現地国で行う所得税の申告においては対象とする必要があります。現地国で受け取っていないことから海外赴任者の申告上、漏れてしまう可能性があります。
支払いも受け取りも現地国において行われないため、現地国の課税当局も把握が困難になると考えられがちですが、日本からの赴任者が、現地で受け取る給与とは別に日本でも給与を受け取っているという情報は課税当局も把握しているケースが多いようです。
もしも海外赴任者の所得税について課税当局のチェックを受けることとなった場合には、日本で受け取っている給与も調査の対象となると考えておくべきだと思われます。上述の通りこの給与は現地国での所得税の課税対象ですので、調査の結果申告漏れが発覚した場合には、納税とともに追徴課税をされてしまう可能性が高いといえます。
現地での給与計算や納税管理などについては、現地法人の管理部や現地の会計事務所などによる管理をすることが多いと考えられますが、申告漏れが発生してしまう可能性があることから、日本本社においても海外赴任者の全世界所得を管理し、適切な申告納税がされるように対策をうつことと、その内容を現地会計事務所などと共有することが望まれます。